2025年3月14日、一般社団法人飲酒科学振興協会「やさしい酔い研究会」の主催により、第3回シンポジウム(会場:レンブラントホテル大分)が開催されました。参加者は大学関係者、研究パートナー、三和酒類株式会社の関係者、メディアなどから、前回より35人増えて80人の出席をいただきました。
今回のテーマは「科学の力で切り拓く、お酒を嗜む未来」。協会代表理事の松浦恵子氏(大分大学医学部 教授)による開会挨拶後、最初の講演者は協会副理事長の馬奈木俊介氏(九州大学大学院工学研究院 教授)、続いて副理事長の吉本尚氏(筑波大学医学医療系 准教授)がリモートによる画面経由で講演。

続いて三和酒類 三和研究所の串尾聡之氏がアルコール体質キット「Nomity(ノミティ)」を使ったやさしい酔い普及に向けた取り組みについて活動を報告。特別講演として、ニュートン別冊「酒と人類」の編集担当者の中村真哉氏(株式会社ニュートンプレス 取締役 書籍編集部 部長)に、編集にまつわるエピソードをお話しいただきました。
登壇者の講演概要
馬奈木氏は、昨年開催時の同氏の発案による「飲酒寿命」という新指標を軸に、人の幸福度(ウェルビーイング)の向上に向けて、数値の科学の視点からどのようにやさしい酔い(適正飲酒)の研究にアプローチして深化させていくべきかを提言。「お酒とうまく付き合える人は幸福度が高い」という仮説立証のため、主観的調査のサンプルを増やすこととAIやGPSなどの最新技術を駆使したデータとを組み合わせた分析の重要性、大学などの研究組織と行政や企業との連携の必要性などに言及しました。

吉本氏は、昨年2月に厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(飲酒ガイドライン)の概要を説明。また、「アルコール体質を知ることはやさしい酔いにつながるのか?」という課題に対応して、アルコール体質検査「Nomity」を利用した体質タイプ別のカウンセリング介入が飲酒量低減につながった事例等を報告。適切な指導のもとに専門治療や自助グループにつなげ、問題飲酒の予防と対応を行う取り組み「SBIRTS(エスバーツ/Screening Brief Intervention Referral to Treatment & Self-help groups)」の有効性にも言及した。
串尾氏は、「お酒ですべての人が笑顔になる世界をつくりたい」という基本的な考えのもと、アルコール体質検査キット「Nomity」の普及活動の現状を報告。企業には健康経営推進のもと、会社飲み会で互いに体質に配慮し合う飲み方に活用され始めたこと、アルコール摂取量からだけではないアルコールパフォーマンス(アルパ)を高めることの重要性などを報告しました。

特別講演の登壇者はニュートンプレスの中村氏。科学雑誌「Newton(ニュートン)」の世代別読者数は10代と40~50代の2つの山があり、過去において10代の読者に配慮して酒をテーマにしてこなかった。しかし今回、ニュートン別冊として真正面から「酒と人類」というテーマを取り上げることについて、「お酒はサイエンスとして面白い。社会勉強にもなり安易に遠ざけるべきではない」といった議論を経て実現に向かったとのこと。これを読んで酒造業界に興味を持つ若い人が増えてくれたらうれしいと述べられました。

パネルディスカッションでは、冒頭に協会理事の今井浩光氏(大分大学医学部 教授)がスピーチ。飲酒を取り巻く社会の考え方の変化にも対応して、「やさしい酔い」は誰にとってやさしいのか、といった倫理学的、哲学的な観点からの提言もあり、松浦恵子氏の締めくくりも通して議論のベースとなる「適正な飲酒」についての科学的な根拠や事例を質・量ともに増やしていくことの重要性が再確認されました。

【開催概要】
名称:第3回 一般社団法人飲酒科学振興協会「やさしい酔い研究会」シンポジウム
テーマ:科学の力で切り拓く、お酒を嗜む未来
日時:2025年3月14日(金)13:00~16:00
場所:レンブラントホテル大分 二豊の間
[講演]
「飲酒寿命を探る:アルコール体質と健康・ウェルビーイング」
馬奈木俊介 九州大学大学院工学研究院 教授 / 主幹教授 都市研究センター長
「アルコール体質検査の現状と今後の展開」※リモート出演
吉本尚 筑波大学医学医療系 准教授 / 健幸ライフスタイル 開発研究センター長
[活動報告]
「やさしい酔い普及に向けた取り組み」
串尾聡之 三和酒類株式会社 三和研究所
[特別講演]
「科学雑誌ニュートンがお酒をテーマにした別冊を作りました!」
中村真哉 株式会社ニュートンプレス 取締役 書籍編集部 部長
[パネルディスカッション]
司会:松浦恵子(一般社団法人飲酒科学振興協会 代表理事)
パネリスト:中村真哉、馬奈木俊介(同副理事長)、今井浩光(同理事)、渡邊博子(同理事 / 大分大学経済学部 教授)、下田雅彦(同理事 / 三和酒類 取締役会長)
話題提供1「やさしい酔いにまつわる倫理 ―― ’やさしい酔い’ は誰にやさしいのか?」
今井浩光 大分大学医学部 教授
話題提供2「やさしい酔いについて科学に期待すること」
松浦恵子 大分大学医学部 教授 / 学長特命補佐(ダイバーシティ担当)
[飲みニケーションワークショップ]
テーマ:最高の飲み会とは?「アルパ」を高める工夫

●一般社団法人飲酒科学振興協会について
一般社団法人飲酒科学振興協会は2022年7月21日、大学の研究者と三和酒類株式会社が共同で設立した研究機関です。活動目的は、ダイバーシティ(多様性)を尊重する新時代に、お酒の適切な飲み方(適正飲酒)、「やさしい酔い」というお酒の楽しみ方について多面的科学的にアプローチし、社会実装していくことです。同年12月22日に「ダイバーシティ(多様性)に調和する、新時代の飲酒のあり方を考える」をテーマに発足記念シンポジウムを開催。2024年3月1日開催の第2回シンポジウムでは科学的根拠に基づく「飲酒寿命」という新概念が提唱され、その社会的意義が確認されました。
写真撮影:三井公一